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(長編)リセット

リセット(39) 最終話

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「もういい!」

後ろからパパが叫んだ。

「もういい、充分だ。そうだろ? みんな」

チャラ男がこんなことするなんて……。僕と年の変わらないような子に自分の指を折らせるなんて……。

惨めに涙を流しながら土下座している少年たちを目の当たりにして、状況を受け止めるのに時間を要した。

「もう充分だ……」

僕は小さく答え、ブチも頷き、姫は視線をそらした。

「もうやめてくれ」

それを聞くとチャラ男は不良を立たせ一緒に頭を深く下げてすまなかったと謝った。そして、このことはボスに報告するからなと彼らに言い、非常階段から帰らせた。


最後の一人が降りていくと、いつものにやけた表情に戻り、頭をかきながら言った。

「大丈夫か? 救急車呼ぶか?」

「触るな!」

差し出された手を思わず振り払った。しまったと思いチャラ男を見上げると、にやけた表情は変わっていなかった。

「おいおい、冷たいな」

これは間違いなく僕の知っているチャラ男だ。

「なんだよ。一体なんなんだよ! さっきの態度、あれが本当のお前の姿なのかよ!」

ずっと偽ってきたのか。騙されてきたのか。僕たちに近づいてどうするつもりだったんだ。

「僕らと一緒にいたのはなんだったんだよ。お前にとったらただの遊びだったのか。仲間ごっこは楽しかったか。歪みを必死で消してる姿はさぞかし滑稽だっただろ!」

残っている力を振り絞ってチャラ男の胸を叩いた。チャラ男はふらふらと数歩後ろにさがったがダメージはなかったようだ。

「トップが交代になったら自分の過去を消してもらうつもりだったのか! 残念だったな。トップ変わらなくて!」

声を振り絞って力の限り叫んだ。睨み付けたチャラ男の顔は間の抜けた表情をして僕を見返していた。

「へ?」

何を言っているのかを理解しようとしているようだった。その表情がすべての答えを語っていた。

「やっぱりチャラ男はチャラ男だ」

ブチが安堵のため息を吐きながら大の字になって寝転んだ。

え? 違うの? 

「でもそれならなんで僕らを無視して黒塗りの車に乗ったんだよ? 追いかけられても助けもしなかったじゃないか」

「ん? 無視したことを怒っているのか?」

戸惑いながらこちらの怒りの原因を探り顎を撫でた。

「あれはな、車の中に怖~いおじさんたちが乗っていてな。オレの知り合いだって知られたらデルタたちに今後危害が及ぶ危険があったんだ。無視して悪かったな。オレはむしろトップ交代にならないよう交渉してたんだぞ? 下手したら殺される所だったんだから」

僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でながらチャラ男は続けた。

「歪みを消すのは本気だったんだけどな。仲間ごっこと言われてしまうとそうかもしれないな。さっきのオレもオレなんだよ。ああいう人生を生きてきたんだ。デルタたちの前ではあんな姿みせたくなかったんだがな。軽いお兄さんでいたかったよ。軽蔑したか? 嫌いになったか?」

「べ、別に嫌いになんて……」

ちょっと驚いただけだし……そうつぶやくとチャラ男はそうかと弱く笑った。

「確かにオレの人生は消したいようなことばかりだよ。でもな、消せないことも知ってるんだ。それに、彼女がいるこの町をオレが危ない場所にするわけないじゃないか」

優しく寂しい笑顔に僕は何も言い返せなくなってしまった。彼女の話は以前聞いたことがある。チャラ男が幸せにしたかった女の人だ。自分の人生を後悔させてくれた人だ。チャラ男は僕が思っているよりもずっと大人で賢いのかもしれない。

「分かったよ。でももうあんなこと嫌だからな……」

僕は下を向いて顔を見られないようにしながら服の裾を引っ張った。




「見て! 偽の月も歪みも消えてるわ!」

姫の声に空を仰ぐと、おぼろにうつろっていた月が消えてなくなり、歪んでいた景色が戻っていた。

「この雨は歪みが降ってきているのかな」

パパはそう言うとブチの真似をして大の字になって寝転んだ。

歪みが降ってきているか。

僕も両手を広げて全身で歪みを受けてみた。今まで消そうとしてきたモノなのに、傷口に染み込み、頬を撫で、肌を伝い降りていく感覚はどこか懐かしくもあり、清々しかった。

「これで一件落着ね。ところで最後のペットボトルは何だったの?」

姫がずっと気になっていたことを聞いた。僕が打って偽の月を消したあのペットボトルの中身。聞いて分かるのだろうか。またブチの専門用語羅列がはじまるんじゃ?

「ああ、あれはミネラルウォーターに、俺の血を混ぜたものだよ」

思いもよらず誰でも分かる答えが返ってきた。

ミネラルウォーターにブチの血……。

「血!?」

あまりの衝撃に絶句した。ブチはあははと大声で笑った。

「大丈夫。別に病気は持ってない」

「いや、そうじゃなくて。いや、それも大事だけど。え? 血? 血で消えたわけ?」

「もちろんヨウ化銀と心的要因を消化することも有効だけれど、それがない状況だったからね。どうしたものかと考えていたんだ。そしたらふと、デルタのクラスメイトの時とデルタの腕の時の共通点が見えたんだ」

何か分かるかい? とブチは僕らを見たが誰も答えられなかった。

「涙だよ。二人とも泣いていた。事例が少なくて確証がなかったけれども、一か八かでやってみたんだ。涙と血は同じ成分だからね」

確証がないのにあんなに堂々と投げてきて、しっかり頷いたのか。前から思っていたがブチは賭け事に向いてそうだ。

「おいおい、オレも仲間に入れてくれよ。ここで何があったんだ? ペットボトル? 月? 何の話?」

一人蚊帳の外のチャラ男が話に割って入ってきた。チャラ男はみんながボコボコに殴られている間ずっといなかったもんな。どこから話そうかと考えていると姫が口を開いた。

「デルタがカッコ良かったって話よ」

唐突な発言にビックリして姫の方を見ると、空が白んできていた。昇ってくる太陽の光を背中に、腫れた顔でにっこり微笑みながら姫がこちらを見返している。

か、かっこいいって……! 顔が紅潮していくのが自分でも分かった。顔の傷から血が吹き出る……!


「若いっていいなぁ。さてさて、もう朝だよ。今日は寝ずに会社かぁ」

パパはそう言うとよっこらしょと立ち上がった。

「え? その状態で出勤するんですか!?」

皆が驚いてパパを見た。パパは不思議そうにそんなに酷いかい? と聞いてきた。

「俺は大学自主休講する。いいデータ取れたからちょっと実験したい」

「大学生っていいわね。私は受験勉強しないと」

「俺で良かったら勉強教えるよ。これでも塾講ではそこそこ人気なんだ。チャラ男もどうだい? 大学行きたいって言ってただろう?」

「いやいや! まず病院に行ってくれ! 頼むから!」

皆あははと笑った。終わったんだ。

皆の笑顔を見ていると段々と実感が湧いてきた。生まれてはじめてかもしれない、僕が何かを最後までやりとげたのは。それもこれもチャラ男、姫、ブチ、パパに会えたからだ。

帰ったら母さんのカレーを食べよう。そして自分のベットで寝るんだ。久しぶりにぐっすり眠れそうだ。



まだ止みそうにない雨の中、西の空には小さな虹がかかっていた。







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~ Comment ~

NoTitle

やっぱり?やっぱり?チャラ男はやっぱり??嬉しいですぅぅぅ(涙)
私のチャラ男!!大好き!!

やっぱりね!私は信じてたんです(そうか?(笑))
でもそっちの世界では意外と地位の高い(?)人だったんですね・・・。そしてやっぱり頑張ってたんですね!!嬉しいです♪


それにしても、人の体液とは・・・!!
なんか科学化合物よりもそっちの方がより利きそうですよね!ただ単なる体液ではなく、思いを込めたものだからより一層!
流石はブチですねぇ♪素晴らしいです!!

そして姫による「デルタがかっこよかった」発言!良かったね、デルタ君♪ヘタレ卒業、姫のハートをちょびっとget!こっから先は薔薇色だっ!!(なんて事はないかもしれないけど(笑))
  • #465 ぐりーんすぷらうと 
  • URL 
  • 2013.12/29 09:37 
  •  ▲EntryTop 

ぐりーんすぷらうと様

チャラ男帰ってきましたよー!
チャラ男気に入って下さってありがとうございます!きっとぐりーんすぷらうとさんの信じる心が届いたんですよ(笑)
ブチは土壇場でもやってくれますね!私もいざってときにこれくらい強かったらなあと書きながら思いました(^^;
デルタ、がんばったご褒美に姫からのプレゼントです(^^)でもまだまだ姫を手に入れるには道のりは長いぞー!がんばれデルタ!
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