(短編)レンタルママ

レンタルママ(2) 最終話

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女の子は捨て犬みたいな不安げな目をしながら何度も頭を下げてお礼を言った。


「ミミって言います。ここに来るのはじめてで、全然お上りさんで…本当ありがとうごさいます」

「いえいえ、何か探してたの?」

「あ…その、美味しいスイーツ屋さんがここら辺にあるらしくて」


そういってミミは斜めがけにしているカバンから何かを取り出そうとするのだけれど、緊張しているのか上手く取り出せず、焦って顔がどんどん赤くなっていく。


「ちょっと見ていい?」


カバンを受け取り、中を覗くと「スイーツ特集」と見出しのついた雑誌が入っていた。


きっとこれね。


取り出して付箋のしてあるページを開いてみると、そこには隣の駅前の地図が載っていた。


「これ場所が違うよ。降りる駅間違えたんじゃない?」

「ええ!?」


細い声をより高くだして首元のボタンをいじりながら雑誌を覗き込んできた。


「もしよければ案内するよ。私今日オフなの」


この子を一人にしたらまた悪い大人に捕まるだろう。私の中の母性本能が放っておいてはいけないと警告を発していた。



ミミは人混みに慣れていないのか何度もすれ違う人にぶつかりながら必死に着いてきた。

念願のスイーツ店に入った頃には大分疲れ果てた様子だった。

しかし、お目当の苺ケーキが出てくると、パッと表情が変わり、一口頬張ると頬が落ちるようにとろけた表情でうっとりとした。


ああ、見てて癒されるわ。
本当可愛い子。

ひとしきり他愛もない話をして、折角だからと、その後近くのアパレルショップで服を見繕ってあげた。

こんなおしゃれなお店に私が入っていいの?なんてオドオドしていたけれど、試着室から出てきた姿は馬子にも衣装といったところか。都会人の仲間入りだ。

美容院にも連れて行って重たい黒髪を私好みのボブカットにしてもらった。


うんうん、可愛い!


バラエティーショップでお化粧品を買ってトイレでメイク。

今流行りの温度で色が変わるリップとか、
黒目を大きくするカラコンとか、

こんなのあるの? と驚きながら笑顔で振り返った彼女は、もう魅入ってしまうくらいの美しさだった。


天然石のブレスレットにお揃いのピンキーリングをつけて、二人で観光名所巡り。


何を見ても新鮮なようで、目を輝かせて好奇心旺盛に質問してくる。

私の話にいちいち喜んだり驚いたりしてくれる彼女を見てると、自分の中で満たされていく思いに気がついた。


ああそうだな、私はこういう反応を求めていたんだ。こういう子の面倒を見たかったんだ。

ストレスを感じていた理由はこれだったんだ。



時間はあっという間に過ぎていった。


6時になるとミミのスマホが鳴り、パッと表情が変わった。


「はい、ママさん、時間になりました。
いつもレンタルフレンドご利用ありがとうございます。『田舎から出てきた純真な子とばったり街で会う』シチュエーション満足いただけたでしょうか?  料金は2万円になります」


ああ…夢の時間の終わり。一気に現実に引き戻される瞬間だ。
もちろん2万のほかに食事代、美容院代、買ってあげたお化粧品、服、アクセサリー、交通費全部私持ちだ。

清算を済ませるとミミはあっさり人混みの中に消えていった。



はぁ……今日もまた結構な出費だったな。また明日からママやって稼ぐか。

私もまた人混みの中に紛れて帰路に着いた。


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~ Comment ~

わあ

面白かった!
すっかりその気になって、楽しんでいました。
騙されたなあ~~w

でも、ちょっとこういうのもいいな~って思いました。
私も1日レンタルしたいな。
レンタル若い男の子(すでに犯罪の域)
こりゃあ1日30万コースだな……。

ママ体質の人には堪らないんだろうなあ~。お世話するってこと自体楽しいんでしょうね。
私は(子供いるけど)ママ体質じゃないみたいだし。
やっぱりレンタルボーイが・・・。(だから犯罪だって!)

lime様

面白いありがとうです!
楽しんでもらえて嬉しいです٩(ˊᗜˋ*)و

limeさんは男の子レンタルですか!美少年がいいですね♪確かにかなり高くつきそう…(^^;
私は執事レンタルしたいです(*´▽`)ノ いい感じのおじ様にお茶とかご飯とか作ってもらいたい(*´ェ`*)ついでに掃除と仕事とその他もろもろ華麗にこなしていただきたい(

limeさんお子さんいらっしゃったんですか∑(゚□゚*)知らなかったじぇ

私もママ体質ではないですね…母性を測れたらきっとかなり低いと思われ…猫とか犬見て はふ〜ん(*´ェ`*)とはなるんですがこれは母性ではないですよね?どこいった私の母性…orz

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