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(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(16) 最終話

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すっかり運転手さんの存在を忘れてしまっていた。

慌てて一階に降り、窓から外に出ると、おじさんと一緒に女性が立っていた。

乱れた髪に大きなおなかを抱えている。

「ハルナ?」

「良かった! 無事で!」

私を見つけた彼女は大きな声でそういった。
間違いなくハルナだった。

「なんで電話でないのよ! すごく心配してたんだから!」


妊娠してひと回り大きくなった彼女がこちらに迫ってくる。
後ずさりしながら私は戸惑った。


「え? え? どうしてここに?」

ここに来ることは誰にも言っていない。
どうして、またよりにもよって、ハルナがいるのだ。


「私実家に帰ってきてたの。旦那のこともあって……。言おうと思ってたのに、全然電話に出ないんだもん!」

怒りのせいか興奮のせいか彼女の顔はどんどん赤くなった。

「おばさんに会って、今から帰ってくるって聞いたんだけど、なんだか様子がおかしかったって、耳鳴りがするとか、お屋敷がどうとか言ってたって聞いて…心配してたの……」

大きな瞳には涙がたまっていた。

「それなのに、いつまで経っても帰ってこないし、近所の人がタクシーが山道入って行ったって言ってて、タクシーなんてこんな田舎じゃ珍しいし、まして山道入るなんておかしいじゃない。
まさかと思って……もう心配で心配で……」


この身重の体で山の中に入ってきたというのだろうか。
よく見るとハルナの体には擦り傷がつき、靴は泥だらけになっていた。


「あの時のことやっぱりずっと気にしてたんだね……。ごめんなさい。私一人で逃げて。帰ってからおばさんや親に何度も聞かれたけど、怖くて知らないフリをしたの。後で帰ってきたの見てほっとしたんだけど、傷だらけだったし……もうなんて声かけたらいいか分からなくて、顔合わせるたびに自分の罪を思い出して嫌になって……離れてしまって……」

彼女はボロボロ涙を流して腕にしがみつきながら自分の裏切りを告白した。


「大人になって再会した時、気にしてないようだったから、もう水に流してくれたんだとか都合のいいこと思ってて、でも突然電話で洋館のこと言うからまた私、知らないフリをして逃げようとした。本当私は卑怯な人間で……」


「いいのよ」

首を振ってまだ続きを話そうとする彼女を制止した。

あの日、ハルナは一人で逃げて戻っては来なかった。
だから私は痛む体を引きずって自力で山をおりたのだ。

でも、一緒にお屋敷に行ったのがハルナで良かったと思う。


「だってほら、今来てくれたじゃない」


時間はかかったけれど、そのことを悔いて今度はこうやって来てくれたのだから。

頭を撫でて彼女の顔をもう一度よく見た。
目尻に皺ができ、ハリを失った肌に疲れが見え隠れしている。それでも泣いた時の表情は小学生だったころの面影を残していた。


「ハルナも戦ってたんだね。私も戦ってたんだよ」

私は力いっぱいハルナを抱きしめた。
腕からは懐かしい温もりが伝わってくる。




「でもさ、こんな時間に山に入っちゃうあたり、私達やっぱり友達だよね」

そういって顔を見合わせて笑った。
すると、なぜかその様子を隣で見ていた運転手さんが泣き出した。


「どうしたんですか!?」

「……私にも色々あるんですよ。でも良かったと思って。うん」


「ええ?」



私たちは仲良く手を繋いで山をおりた。





「ハルナ、電話でなくてごめんね。旦那さんのことで実家に帰ってるって……」

「うん……それは……」

ここから先はまた別のお話。
もちろん運転手さんのお話もね。


子供の頃の他愛のないうわさ話が呪縛となっていた。でも、この出来事がこれからの私を救ってくれる気がする。


ねぇ、ハルナ。
これからも私達の先に用意されてる道は平坦ではないけれど、
それを悲観するか楽しむかは私達が自分で決めていいことでしょ?

迷いながら、確かめ合いながら、進んでいくならそんなに悪くない。悪くないよね。



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~ Comment ~

こちらのほうに

みなさん、あとがきにコメントなさってますので、私はこちらに。

意外と……と言ってはなんですが、途中までの感じよりもずっと、読後感の爽やかな物語だったのですね。
「別のおはなし」のほうにはいろいろあるのでしょうが、それは主人公が聞いてあげて、別のこととして解決していくわけだと解釈しておきます。

先日の感想で書いた「もしかして」は、主人公が死んでいるというものでした。
ホラーっぽい小説にはよくあるんですけど、私はあれは好きではないので、たおるさんがそう結論つけたお話になさらなくてほっとしました。

先日読んだ短編では、主人公の男性がつきまとってくるモトカノに「きみはもう死んでいるんだ」と告げる。
またかと思っていましたら、どんでん返しがありまして、実はモトカノは死んでいなくて別の男性と結婚していて、主人公がふられたのを自分に言い訳するために、モトカノは死んだってことにしていたらしいです。

実は死んでいた、ってのもひとひねりすると面白くなりますね。

あかね様

最後まで読んでくださりありがとうございます!

あかねさんが言っていたのは、主人公が死んでるってことでしたか。
言われて見ると、そうとも読めるお話になってますね……。

書いてるときはホラーのつもりはなかったので、みなさんのコメントから「え?怖い??」ってはじめて気づいたという(^_^;)
読んでくださる方の意見って大事ですね……書いてると盲目的になってしまうので、しみじみそう思いました。

みなさん目が肥えてらっしゃるので書いてるとドキドキです(^_^;)
確かに実は主人公死んでたとかいうホラー話ありますね。
はじめて読むと「おお!」ってなりますが、使いやすいネタっていえばそうですし……。
夢オチとかも(笑)
主人公の頭がおかしくなってるって展開、私もよく使いますが、これもありきたりですよね(^_^;)
小説書いてるとどうしても似たり寄ったりになってしまいます。うまく料理できればいいのですが……。

死んでいたはずが、死んでいたと思い込んでいたって話なかなか斬新ですね。
そのモトカノは結婚しているのに主人公につきまとってきてたんですか??
結婚生活がうまくいかなかったとか? それともつきまとっている事自体が主人公の妄想だった?

まだまだ未熟者ですが、書く話に自分らしさが出せて、出来れば読んでくださる方が楽しんでもらえるような、そんなお話が書けるようになりたいです(>_<)
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