(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(15)

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2本の腕で柱にしがみき、足は宙をかいた。
柱は頼りないバランスでかろうじて留まっている。
少しでも動いたら落ちてしまう。

「助けて!!」

ハルナが振り返る。

目があった。



しかし、彼女は踵を返し、階段を走り降りて行った。


ーーああ……
ーーそういうことだったんだ

欠けた記憶のPEACEが全て繋がった瞬間だった。



柱ごと私は落ちていった。
そして、誰も助けに来てくれることはなかった。

ーーずっとここで待ってたのね……

ぽっかり開いた穴の底で、あの日置き去りにされた子どもの私が一人ぼっちで泣いていた。

ーー誰かに助けに来てもらいたかったんだよね。
       怖かったんだよね。痛かったんだよね。
ーー遅くなって、ごめん。
        今、来たよ。


抜けた穴を避けて通り、奥の部屋に入ってみた。
正面に置かれた大きな鏡。

覆いかぶさっている剥がれた壁紙を除けると、鏡は割れて破片が一つだけ残っている状態だった。

カビが生え、曇った鏡面に映った幼い顔が、今の私と重なる。




時計の鐘が鳴り響いた。

一階にあったあの大きな掛け時計だ。

穴の奥で何度も聞いた音だった。
重々しくバリバリと鼓膜を揺する重低音。

まるで耳鳴りのようなこの振動……。

その揺れで最後の破片が剥がれ、床に跳ねて隙間から下へ落ちて消えたいった。


鏡を見つけた時のあの物音は一体何だったんだろう。
当時は誰かがいるように思えたが、今から思えばただ何かが軋んだ音だったように思う。
だって穴の底で泣いていた時、嫌というほど誰もいないことを確認している。

普段なら大したことのない物音だったのに、怯えていた私達はそれで恐怖心を後押しされてしまったのだろう。


破片が消えた後をずっと見つめていた。
どれくらいの時間そうしていただろう。

ふと、今まで私を煩わせていた耳鳴りがなくなってることに気がついた。



私は両手で耳を触ってみた。

なんの混ざり気もない、自然の音が私の中に入ってくる。

あの耳鳴りは、もしかしてお屋敷が私に知らせてくれていた音だったのだろうか。
ここに私がいるということをずっと……。




東の空が白んできていた。

外で何やら人の声が聞こえる。

あ、運転手さん!
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~ Comment ~

NoTitle

こんばんは!
さっそく読ませていただきました♪
今いいところなので敢えて感想は温存します。笑
次回も楽しみにしていますよ(∩´∀`)∩

あ、最後の一文には思わず笑ってしまいましたw

夢月亭清修様

こんばんは!
いつもコメントありがとうございますm(_ _)m

あと一話で終わります! やっと終わります!(笑)
最後のコメント楽しみにしてますね♪

最後の一文、自分でもおじさんの存在忘れてたのでおんなじ状態でした(笑)
夢月亭さんに笑ってもらって良かったです(笑)

おや

過去にはそんな出来事があったのですね。その後どうなったのか、気になりますが、彼女が今生きてここにやってきたということは、助けられたんですよね~。そのいきさつを楽しみに待ちます。ハルナはそのまま帰ってこなかったわけじゃないよね?
でも私も夢中になっていたら、つい忘れてましたよ。運転手さん~! 
あと1話なんですね。最後まで拝読してまたコメします(*^_^*) 

大海彩洋様

コメントありがとうございます!
えっと、主人公はそのまま一人で山から帰ったってことになってます。
ハルナは迎えにきませんでした(^_^;)

運転手さん、すっかり忘れてました(笑)
本当は運転手さんは主人公を実家まで送ってそれでおしまいの予定だったんです。それを変更してお屋敷までついてくるようにしたので、どこで絡ませたらいいのか迷います(^_^;)

後一話で終わりです!
10話で終わる予定がずるずる長引きました;
またコメントお待ちしております♪

え? もしかして……

もしかして、もしかして?
なんて想像していますが、私の想像、当たってるのかな。
当たってないのかな。
次でわかるのですね。

SFだと理屈や論理が必要ですが、ホラーやファンタジーはそれがなくても小説として面白かったらいいんですよね。

もしかして、だとしたら、私の意表をついていました。
その「もしかして」がなんなのかは、最終回の感想に書きますね。

って、そんなにもったいぶるような想像ではないのですが。
(^^;)

あ、そうか!

生きてるとは限らないんか~
あ~~~~(最終話を待ちます)

あかね様

ぬ?なにを想像されたのかな??
そんな作りこんでないんでたぶん想像されたような話にはなってないと思います(-_-;)

期待値あがってしまって最終話で「はぁー?」ってなってしまいそうです(^_^;)最終話早くUPしてしまおう……


あ、そちらのコメ返で、ユキちゃんと旅行行くって話で「返事がない」ってトコ笑いました(笑)
シゲちゃんが新聞載る夢!すごい!シゲちゃんなにで載ったのかな? 緊張して硬い顔して写真とか載ってそうです(笑)

私もユキちゃんと旅行に行く夢がみたいです♪すごい楽しませてくれそう((o(´∀`)o))ワクワク

絵は忠の絵をもう書いてあって、このお話UPし終わったらまたUPする予定です( ´∀`)bグッ!
モモクリちゃんの絵でまたお話書いてくれるんですね!?嬉しいです!(≧▽≦)楽しみにしてます!!

大海彩洋様

わっわっ!最終話大したことないですよ!!
期待値上がりすぎてがっかりの結末をお届けすることになりそうだ(-口-;)

早急にUPします! 今あとがき書いてます!今週中にはUPします!(どんだけ長いあとがきだ
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