(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(14)

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カビと埃を含んだ饐えた臭気が漂ってきた。

足をつくと床が柔らかく反発をし、湿った音を出した。


どうも下地材が腐っているようだ。


気をつけて進まないとこれは踏み外してしまう。


部屋を見渡すと、暖炉に大きな掛け時計、ソファーに書斎棚、置かれている家具はどれもアンティークと思われる重厚な作りのものばかりで、一部屋一部屋の間取りも現代のものよりひと回り広く感じられた。

きっと持ち主は資産家だったのだろう。



こんな部屋になってたのね。


子どもの時見ていたはずなのに記憶がはっきりしない。
当時は怖くてそんな余裕なかったものね……。


どこをどう歩いたか思い出すため、一階の部屋を一通りぐるりと見て回った。

そして、長い廊下を渡って離れに進んだ。


離れは炊事場となっていた。


両側の壁には食器棚が据えられていて、正面のアーチ窓からは月明が差し込んでいる。


照らし出された床や天井は全体的に煤だろうか、黒く汚れている。

割れた食器を踏まないよう中に進むと、柱の影に小さな階段が姿を現した。


この階段、登った記憶がある。


そう、鏡は二階にあったんだ!




登ろうとするとここでハルナが腕にしがみついてきたんだ。

「もう、帰ろうよ」

私は答える。

「せっかくここまで来たんだよ? 鏡見てから帰らないと意味ないじゃん」



階段は一段一段がかなり高く、急な傾斜になっている。二人で身を寄せ合いながら一歩ずつ上がった。


二階は一階とまるで違い、もう殆ど崩壊していると言っていい状態だった。

所々屋根が雪崩落ち、窓ガラスは全て割れ、外の木が侵食してきている。床も斜めに傾き、蔦や野草が生えていた。


「これ以上進めないよ」

「行けるって。鏡はすぐそこだよ」

「やだ。もう怖い! 行きたくない!」

ハルナが泣きそうな顔で叫ぶ。

「しょうがないな。じゃあ見てくるからここで待ってて」


本当、弱虫なんだから。
ここでやめたらなんのために来たのか分からないじゃない。

半分怒りもこみ上げてきて、行く手を阻む木材をまたいで意地になって奥へ進んだ。

「あ、ここから見えるかも」

扉の割れた隙間から、部屋の中が見えた。

背伸びして覗いてみると、壁に天井から床までの大きな黒い物が見える。
倒れている柱に足をかけ身を乗り出してもっとよく見ようとした。

黒い物には剥がれた壁紙が覆いかぶさっているが、微かに光を反射したように見えた。

「あった!」

その声と同時に私たちではない何かの物音がした。

「!!!」

誰かがいる!?

私たちは一目散に階段へ走った。


でも。



倒れている柱を乗り越えようと両手で体重をかけた瞬間、視界が大きく傾いて、朽ちた床が抜けた。

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~ Comment ~

鏡は横にひび割れて

というタイトルの小説が……アガサ・クリスティだったような、読んだかどうかも忘れてしまってますが、たおるさんの書かれたこの小説の中では、鏡にはなにが映るのでしょうか。

この場合、いちばん怖いものってなんでしょうね?
私だとそれほどインパクトの強いものは思いつきませんが。

それにしてもこの主人公、怖いもの知らずだなぁ。
私は子どものころは変にかっこつけでしたので、林間学校の肝試しで怖がってしがみついてくるクラスメイトに、私も怖いのに怖くないふりをしたり。

中学校のときにとなりの席の女の子のペンケースに、いたずらな男の子が芋虫を入れて、女の子が教室中に轟く悲鳴を上げまして、私が芋虫を窓から捨ててあげたり。
素手でさわるんじゃなかったらほんとに芋虫は怖くはなかったのですが。

というようなことも思い出しましたが、この主人公、怖いよりも好奇心が勝ってますものね。

あかね様

コメントありがとうございます!


鏡は横にひび割れて、読んだ事無いです…どんなお話なんだろう。青空文庫にあるかな……今度読んでみたいと思います!

主人公はもうここまで来たら行くしかないんでしょうね(^_^;)
子どものころにハルナを引っ張ってお屋敷進んでたあたりの性格が、ここらの行動につながっていると思ってもらえると嬉しいです。


あかねさんは子供の頃そんな性格だったのですね!かっこいい!
私は怖いくせにお化け屋敷入りたがったりする子でした(笑)あかねさんみたいな友達には何度も助けられました(笑)

虫もOKですか!頼もしいです!
虫は子供の頃は全然平気だったんですが、大人になってから無理になりました(-_-;)なんなんでしょうね……
イモムシ系は大丈夫なんですが、ゴキブリとか蜘蛛とか……無理無理(><)この前窓拭きしてたら上から黄色と黒の縞々の蜘蛛が落ちてきて卒倒しそうでした……是非あかねさんにうちに出る虫を退治してもらいたいです(-_-;)

NoTitle

こんばんは(*´・ω・)ノ
「その声と同時に私たちではない何かの物音がした」とは、一体何なんでしょう?
何かの正体がどれだけ輪郭のある描かれ方をするのかでエンディングの後味も変わって来そうですね♪
ともあれ過去が語られ始めたので嬉しい限りです(∩´∀`)∩
次回も楽しみにさせていただきます。

夢月亭清修様

こんばんは♪コメントありがとうございます!

ここでやっと過去が明らかになります。長かった( ´Д`)=3
物音は何だったんでしょう。。って大したものじゃないんですけどね(笑)
終わりもグダグダになるんであまり期待しないで待っててくださいな(^_^;)

夢月さんもやっと時間が出来てストレス発散の釣りに行けたようでちょっと安心しています(^_^)
「不思議なオカルト研究部」の方も楽しみにしてますよ!( ̄ー ̄)ニヤリ
次はどんなオカルトが出てくるがわくわくしながら待ってます((o(´∀`)o))ワクワク

NoTitle

続きが気になり過ぎて一気にまとめ読みしてしまいました。
主人公の社会へのお疲れ様っぷりが自分と重ねてしまって辛いですー。頑張れー。
個人的に何話かの耳鳴りについてお母さんが「再発したの」というセリフにぞわぞわしました。
続きが気になります!更新楽しみにしておりますー(^^)

鮫島まさきち様

コメントありがとうございます!
おお!一気に読んでくださったんですね(>_<)嬉しいです!

このお話は社会人20〜30代に共感してもらえたらと思って書いていたので、社会への疲れ具合がうまく伝わったようで安心してます(*´ο`*)=3
再発したの、にぞわぞわしてもらえましたか!そうなんですよ…主人公は実は昔にも耳鳴りを訴えてたんですね…

褒めてもらえてテンションあがりました(笑)更新がんばります٩(ˊᗜˋ*)و
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