(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(10)

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先ほどの岩も記憶より小さく感じたのだ。
印は思っているより下の方に付いているのかもしれない。

小さかった頃の自分の背丈を考えて少し屈んでみた。

これくらいだったかしら。

体重ばかり気にして身長なんてもう何年も計ってなかった。
印を見逃さぬよう、木々に顔を近づけてよく見てみた。

ないわ…

木の周りを一周して丹念に調べたが、それらしきものはない。

別の木かしら。

隣の木の方に体を動かそうとした時だった。
誰かに力強く腕を引っ張られたような衝撃でバランスを崩して盛大に尻もちをついた。

っ…!

臀部から頭の先に渡って痛みが走った。


一体誰!?
こんな山の中に人なんて……もしかして痴漢。

ジンジンと体を走る痛みに耐えながら辺を見渡したが人影は見つからない。

ソッと右腕に何かが這う感覚。
恐る恐るソレを触ってみるとぬるっとしたモノが指についた。
この感触、そして鉄の香り…

血…

ああ…そういうことか。
どうやら腕を引っ張られたのではなく、木の肌か枝が腕に引っかかり、それに気づかず動こうとしたせいで傷ついたのだ。

「もうやだ……」

街で倒れて泣いている子どもを見る度、ただ親に甘えているだけだと侮蔑の目で見ていたが、実際転んでみると本当に痛い!

自分がとても惨めに思えた。

何をやっているのだろう。
こんな夜中に山に入ったりなんかして。頭でもおかしくなったんじゃない?

自嘲気味に笑いがこみ上げてきた。


……もう帰ろう

まだ痛みが残る体をソロリソロリと持ち上げて、体に付いた土を払った。

本当何やってんだろう私。
そう思ってきた道を戻ろう振り返った。

あれ…
私どっちから来たのかしら。

周りを見渡したが右も左も分からない。

今まで記憶を辿って闇雲に進んできていた場所が、別世界になり変わった。

さっきまで念入りに見ていたんだよ? 手探りで木々を舐め回すように見て……なのにここ、知らない。

なにかしら……この景色……ううん、この感情。

昔から知ってる。
胸の奥に何か懐かしい…。

何かが思い出されそうになった。
暗くて……知っているはずの景色の色が変わる。そして体に残る痛み。



ふと、遠くにサーチライトのような光が一つ。
そして低い声が聞こえてきた。
誰かいる!


「すいません! すいません!」


私は大きな声を上げた。



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~ Comment ~

ひしひしと

私は方向音痴です。
リアルでも家の近くでさえもたまに迷う。繁華街や商店街だと店に入って出てくると、どっちから来たのかわからなくなる。
東西南北で言われてもわかりません。

だから車の免許は持ってません。
夢の中でさえ迷子になってます。
建物の中でも迷います。

今回は夜の山の中で迷子なんですよね。
まさに溺れる者はなんにでもすがりたい。
さて、なにがあらわれるのでしょうか。

あかね様

あかねさん方向音痴なんですかΣ(゚Д゚)
なんだかテキパキ色んなとこ行ってそうなイメージでした。

あれ?運転免許持ってなかったんですね? 車の写真を見た記憶があるのでてっきり運転されてるんだと思ってました(^_^;)
最近はカーナビという優秀な子がいるんで大丈夫ですよ!
私の友達はカーナビついてても「自分の道は自分で決める!」とか言って無視してますが(笑)
迷子になってもなんだかんだで目的地についたら大丈夫です( ´∀`)bグッ!
新しい発見も出来ますし♪ちょっと遠回りの散歩してたと思えば素敵なことです♪

私も免許持ってないんですよ。なんだか人ひいたらどうしようとか思ってしまって(^_^;)
でもゆくゆくは取りたいです!取ったら大阪遊びに行きますね♪

夜の山の中では逆に方向音痴の方が抜けられるかもしれませんよ!
まぁ行くもんじゃないですが(笑)
このお話10話で終わる予定だったんですがまだまだ続きそうです(-_-;)おかしいなぁ…字数数えたはずなんだけど。
もう少しお付き合いくださいませm(__)m

NoTitle

´ω`)ノ こんにちわ
廃屋の残響、最新話まで追いつきました♪
自分は恩田陸さんの小説を昔から愛読しているのですが、「謎」に対するアプローチがSFやオカルトのままで終わる作品が特に好きです。(人為的なオチでない作品と言うのでしょうか?w)
こちらの廃屋の残響もそれと似た空気感があって、今とっても面白いところです(∩´∀`)∩
ハルナ何を隠しているのでしょう?
続編に期待しています♪

夢月亭清修様

こんにちはー
こちらも読んでくださったんですね!ありがとうございますm(__)m

恩田陸さんの作品はまだ読んでないですが、空気感が似てますか。それは是非読んでみないと♪
面白いと言ってもらえて嬉しいです(≧▽≦)

そちらのブログにも遊びに行ってるのですが、私釣りのこと詳しくなくて(-_-;)
コメント書けなくてすいません…記事を見て雰囲気だけでも楽しませてもらってます。
でも釣りは前からやってみたかったので、機会があったら挑戦してみたいと思いますヽ(=´▽`=)ノ
初心者でも楽しめる釣りあったら教えてくださいませ♪

続きまたUPしますね。

わお~

彼女は、思い立ったら猪突猛進だったのですね。夜、タクシーを2時間も飛ばして(かなりの金額?)どうしても行きたくなっちゃう、なんて。お母さんの話を聞いて、それをさせるだけのものが自分の記憶の中に沈んでいるって、そんな気持ちになったんですね。
いや、私がタクシーの運転手だったら、やっぱりこの女、ヤバいぞって思うわ~。
しかも、子どもの頃の記憶だけを頼りに行くなんて、もう全く危険! 木の印なんて絶対に変わっている、または消えているに違いありませんよね。さらに、最後にまた怖そうなものが……こんなところでサーチライトと人の声? 絶対まともなものじゃないと思っちゃいます。
あ~、これって、ほっとして終わります? だめ?

大海彩洋様

コメ返遅くなりました(>_<)すいませんm(__)m

主人公はもう判断能力がなくなってしまってます(-_-;)
とりあず現状から逃げ出したい、そんな気持ちで行動していると思います。
タクシーで2時間はかなりの金額ですよね。
私も一度飛行機が遅れて夜中に空港についたんですが、次の日予定があってのでタクシーで高速飛ばして帰ったことがありました。あれ何時間くらいかかったかな…万札が飛びましたよ(-_-;)一応空港からの謝礼で払いましたが(-_-;)

タクシーの運転手さんって色んなお客さん乗せないといけないから怖いですよね。
私も夜に山道で下ろしてくれっていう女の人乗せたら怖いです(笑)

一応終わりはホッとする……と思います(
んーでももやもやが残ったままの終わり方になるかも……読むの怖かったら無理なさらないでくださいね(>_<)
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