(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(4)

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「ちょっと なにこれ!」

先輩が眉間に皺を寄せて、先ほどコピーして渡した書類をバサバサ振った。

「はい?」

「『はい?』じゃないわよ! 私はこれを全部5部ずつコピーしてって言ったよね?」

叩き返された書類をめくってみると、途中重複していたり、印刷に失敗したのか白紙状態のページがあった。

「あ、すいません」

「もういいわよ! 自分でやるわ! 何年やってるのよ」

原本を奪うように取り上げられ、ついでにその手で押しのけられて足元がふらついた。

おかしいな……ちゃんと確認したのに。

最近ケアレスミスが続いている。

自覚しているため念入りに確認作業をしているつもりなのだが、相変わらずミスはなくなっていない。


「あの子本当使えないわ。コピーもまともに取れないんですよ? いっつもボサーとして見ててイライラする!」

先輩がコピー機の前で聞こえよがしに私の無能さを上司に愚痴っている。

その言葉が機械音と重なって頭の中でワンワンとこだまし出した。

……なんだか頭が痛いわ


こめかみを押さえてみたが、ズキンズキンと脈打つ痛みは消えてくれない。


耳鳴りに合わせて頭痛まで……

一度病院に行ったほうがいいかしら。

でも、これはきっと寝不足のせいよね。集中力がなくなってミスしているのもそのためだわ。

工事さえ終われば、あるいは……。




「隣の男を任意で事情聴取だって」

トイレに行くと、派遣の女の子たちがスマホを見ながら騒いでいた。

「え? なになに」

「今速報で、ほら。マンションで行方不明になってた女の人の事件あったでしょ? 任意で事情聴取ってもうこいつが犯人ってことだよね」

「あれ? この人インタビューされてた人じゃない? えー! 怖い」


ああ…やっぱりあの男だったんだ。
TVに流れていた顔が目の前をちらついた。

事情聴取ということはまだ決定的な証拠がつかめていないのだろう。
ということは被害者女性の遺体が見つかっていない?

帰る頃にはもう少し詳しい情報が流れているかしら。

自分のスマホに視線を向けると、またハルナからの着信がライトを点滅させていた。



いつもの帰り道も、頭痛がする頭には辛かった。


若者向けの服屋やカラオケ店から流れ出る流行歌。

車のクラクションが鳴り合って、その間を縫うように騒ぐ酔っぱらいと客寄せの大声。

世の中にはなんと音が溢れていることか。


それでもなお、人は音が足りないと言わんばかりにイヤホンで曲を聞き、それ以上に大きな声で言葉を吐き出している。


ーーもしもし?

ハルナから着信があったことを思い出し、かけ直してみた。
しかし、彼女の言葉が頭痛に反響し、脈打つ痛みへと変わっていく。

ーーえ?なに? ごめん、聞こえない。
   ううん、聞こえないんじゃない。聞こえてるんだけど……意味が取れないの


自分の声が、どこか遠くで鳴っているようにこもって小さい。

周りの音が大きすぎる。



みんなどうして平気なの?

私はもう頭が割れそうだわ。
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~ Comment ~

高まっていきますね

身体の不調、精神的にも不調。
耳鳴り、頭痛、こんなときにこわーいことが起きるのですよね。

ホラーでも特に怖いのは、小さい子どもものかもしれません。
あとは私、最近ふと気づいたのですが、鋭利な刃物が怖いのです。

刃物を見ているとそいつが私の身体を傷つけることを想像してしまって、ぞぞぞぞーっ。
前世があったのだとしたら、私はギロチン台の露となって果てたたのだろうか、なんて。

今夜はやたら暑いせいか、普段以上にイカレております。
刃物を想像しても涼しくはなりませんよね。

あかね様

あかねさんwwwどうしたんですかwww

暑さのせいですね(笑)二年目にして新たなあかねさんを発見(笑)
優しくて面白くでもう大好きです(笑)

ホラーものにはなぜか子どもと女性が多いですよね。
バーコード頭でビール腹のおっさんでもいいじゃないかと思うのですが、まぁ視覚的には黒髪ロングの美女の方がいいんでしょうね。

刃物怖いです!
こすれる金属音とか!ぞわぞわーってします((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
銃で殺されるより、包丁とか斧でブスブスされた方が怖いです!
一発で死ねない辺ももう……(-_-;)
自分は刺されてないのに 痛いーー!ぎゃー!!ってなります(>_<)
なんか自分で言ってて怖くなってきました(おい

あかねさん前世はギロチンで∑(゚Д゚)ガーン
昔の死刑はアナログで痛み倍増な感じですよね((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
昔の拷問とか絶対受けたくないです……。
いや、今の拷問も受けたくないですが(-_-;)
私がスパイなら拷問するって言われただけですぐ白状してしまうと思います。

なんの話をしているんだ(爆)
コメントありがとうございました(笑)

NoTitle

『拷問』の言葉で、すぐに吐いてしまうスパイ(笑)
すみません、あかねさんとのやり取りが面白くて。
私も刃物は、すぐに痛い想像をしちゃいます。これって、・・・ビビりだから?
それはさておき。
この主人公、どんどん深みにはまって、病んで行ってるような気がしますね。
もうこれは・・・ホラー展開まっしぐらですよ><
耳から入る音がさらに精神を崩壊させていく。

私は今「NOISE」っていう小説を書きはじめたんだけど、このたおるさんの物語の方が、よっぽどノイジーですよね。
うーーん、どうなっていくんでしょう。

lime様

あかねさんが面白かったのでつい私も脱線して話してしまいました(笑)
あかねさんとはもっとガッツリお話したいです(笑)
ぜひlimeさんも参戦してください(笑)

刃物=痛いは全然ビビリじゃないですよ!みんなきっと痛い思いしてるんで条件反射的なものができてるんです。正常な人の反応だと思います。大丈夫です( ´∀`)bグッ

この話はホラーですか∑(゚Д゚)ガーン
そうか…じゃあジャンルはホラーってことでφ(..)メモメモ(おい

limeさんも音に関するお話をΣ(゚Д゚)
それは読まなければ!limeさんが書いたらどんなお話になるのかな。楽しみです(^_^)また遊びに行きますね。

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