(長編)廃屋の残響

廃屋の残響(2)

 ←祝!二周年!&廃屋の残響(1) →※追記あり (捧げ物)あかねさん♥ シゲちゃん雑誌デビューおめでとう!
帰宅ラッシュの電車に乗り込み、入り口に立つと、車窓に自分の顔が映った。

目尻やほうれい線の皺が目立ち、血色が悪く、頰もこけ、まるで老婆のようだ。
自分でも見るのが嫌になるくらい、不幸がにじみ出ている。

私ってこんな顔をしているんだ。

隣に映っている女性を見てみると、初々しさの残る顔は綺麗にお化粧され、お洒落なスーツに身をつつみ、生気あふれる表情をしていた。きっと私より若いのだろう。

いい年の私が今更外見取り繕っても仕方ないわよね……。

化粧のよれたその顔をひと撫でして、目を逸らした。



私は会社から数駅離れた所にある賃貸マンションで一人暮らしをしている。

治安のいい地域で家賃の安い物件を探した結果、このマンションになった。

最寄り駅からさほど離れてもいないところがも利点だ。

帰り道は店屋がひしめき合う大通りが伸びていて、夜道も明るく人通りが多い。

ただ、問題はというと、周囲を大きなマンションとビルが囲まれているため日が当たらないことと、部屋の壁が薄いことだった。
また、運の悪いことに隣人が趣味でギターを弾く。

隣の住人は学生のようで、平日でも下手なギター音とそれに合わせた耳障りな歌声が朝方まで続いている。
管理会社に苦情を言ったものの、止まることはなかった。

今日も家に帰ると隣から音が響いていた。

一体なんの曲を弾いているのか。

いつも同じメロディーなのだが、毎度同じ箇所でつまづきはじめからやり直すため一向に全体のメロディーが分からない。


スーツを脱ぎながらテレビをつけると、綺麗にメイクしたニュースキャスターが最近話題になっている行方不明女性の事件を読み上げていた。

職場の人間が連絡が取れないと言ってマンションを訪れてみると、鍵のかかった自室の玄関に血痕だけを残し、姿が見えなくなっていたのだという。

エントランスに設置された監視カメラの記録にも女性の帰宅姿は映っているが、外出した形跡はないらしい。


これって同じマンションの住人が関わってるってことでしょ。


こういうことがあるから隣に直接騒音被害を訴えられない。
逆恨みでもされたら怖いわ。何されるか分かったもんじゃない。
まぁ全て快適にとはいかないわよね……。学生だったら、卒業したら出ていくかもしれないし。


ギター音が収まったのは朝4時のことだった。

やっと眠れると、うとうとしていると、重機のけたたましい音で叩き起こされた。

時計を見ると8時だ。

窓が震えるほどの騒音。

一体なに!?

カーテンの隙間から外を覗いてみると、向かいのビルの解体工事が始まっていた。

信じられない!

今日は遅番だからゆっくり眠れると思ったのに。

飛び起きたせいか耳鳴りがわんわん鳴った。
外の音と相まって一段と酷く感じる。

もうやだ……。この部屋にいたらおかしくなりそう。時間は早いけどこのまま出勤しよう。



耳鳴りが収まらないまま職場につくと、丁度休憩時間の先輩に捕まった。
先輩は休憩室に誰もいないことを確認すると堰を切ったように上司や後輩の悪口を言い始めた。

出てくるわ出てくるわ。
悪口の山。

ここで賛同してしまうと後々面倒なことになる。
曖昧な返事で上手く交わしながら先輩のストレス発散に付き合った。


毎日同じ場所に通い、同じ人に会い、同じストレスを感じ、帰って眠るだけの日々。

もし就職せずに昔付き合っていた彼氏と結婚していたら、こんな生活送らなくて良かったのかもしれない。

でも、結婚が必ずしも幸せであるとはいえないわよね。ハルナのようなことだってあるんだから。

彼女の顔が脳裏に浮かんだ。

ハルナといえば……。

昨日の会話が思い出される。


お屋敷の鏡を覗いたらどうなるんだったかしら。

思い出せない。

確かそれを見るために忍び込んだはずなのに。

実際見れたのかどうかも覚えていない。

……もう一度行ってみたいな

もう一度、子どもの頃の秘密の場所に。




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~ Comment ~

NoTitle

この「私」、いろいろ私生活でもついてないことが多いようですね。
でも、電車の窓に映る自分の姿に「げっ」と思う事、ありますよね。
あれはぜったい見ちゃいけません。光の加減で10歳は老けて見えちゃうから。「あれは幻」と思わなきゃ(笑)
ある意味、学校の階段の鏡より怖い><

いや、そんなことはどうでもよくて。
この人、やっぱりその屋敷に行くのでしょうか。怖いなあ・・・。

同感です

電車の窓、それから、たまたま入った喫茶店ですわった席の真向かいに鏡がある。私もそういうのいやです。夜の電車が嫌いなのも同じ理由です。

limeさんに同感です。

主人公のちょっとしたつらいこと、リアリティありますね。
我が家の隣家にも昔、若い男性がひとり暮らしをしていました。友達を呼んで騒いだり、目覚ましがわりの音楽がフルヴォリュームだったり。

その彼が結婚して同じ場所で暮らしはじめると、今度は生まれた子どもが泣いたりわめいたりする。
そのかわり、うちも少々うるさくしても隣は文句言える義理ではないので、気は楽でしたが。

んで、つい先日までは近所で工事。
解体作業のときには地震かと思えるほど揺れていました。

という具合に、今回みんな、わかるわかる気分だったのですよ。

ホラーではないとたおるさんはおっしゃってましたが、いろんな小道具がサスペンスを高めていってますね。
やっぱり怖そうです。

lime様

電車の窓は駄目ですよね(笑)寝起きの顔といい勝負の怖さです。
私もたまに視界に入ってドン引きします(笑)
そうか!あれは相対性理論とやらのなんとやらが関係を!
じゃあこれからはあれから10歳(以上)若いと思うようにします(笑)

主人公はお屋敷に行っちゃうんでしょうか…。どうなんでしょう。
楽しみにしてください(笑)

あかね様

不意に自分の顔見るとビックリしますよね(笑)
limeさんの言われるようにあれは幻だと思うことにしました( ´∀`)bグッ!見えない見えない現実は何も見えない(

おおあかねさんのお宅の隣にもこんな人がいらっしゃいましたか!
困りますよね……私が以前住んでたマンションは壁が薄くて、治安も悪くて、もう……
夜中にバンドはじめたり、チアガールの練習はじめたり、騒音はいつものことで、変質者もいるし、事件も起きるしetc
色々怖い目にもあったんで2年で引っ越しました(-_-;)

工事も困りますよね!!
本当耳元で釘を打たれてるのかと思うくらいうるさいんですよ…。振動もきますよね。
もう寝不足も酷くて、ネカフェやカラオケ店で寝起きしたりもしてました(-_-;)

いやー分かってもらえて嬉しいですε-(´∀`*)ホッ

やっぱり怖いですか(^_^;)うーんじゃあこれはホラーかサスペンスってことに…というかそもそも自分でホラーとかサスペンスの定義が分かってないんですよね(
一応全部読んでもらってどのジャンルになるかもう一度聞いてみたいと思います(^_^;)
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