(短編)細見さんの隣

細見さんの隣

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僕のデスクは、細見さんの隣だ。

細見さんは転職組で、僕より後に入社したが年齢は上になり、30代後半だ。
貫禄のある体格をしていて、それに見合った頼りになる性格をしている。

神経質なところがある僕にとって、そういう人が隣にいることは色々助かる。

ただ、気になる部分もある。

まず、デスクの引き出しをちゃんと最後まで閉めない。
机上はいつも乱雑に散らかっていて、積み上げられた書類が10センチばかり僕の方にはみ出してきているが、気づいていないようである。

もちろん、席を立つ時イスを引いたりしない。
ただでさえ席の後ろに棚があり、通路が狭くなっているのだから、気を使って欲しいと思う。

仕方ないので、毎回僕が代わりに机の引き出しもイスも閉めているのだが、そのことを本人は分かっていない様子である。

そして、PCのキーボードを打つ音がうるさい。
先日キーボードのHキーが取れたのも、バンバンと乱暴に打っているせいだと僕は思っている。

おまけに、貧乏ゆすりをする癖がある。
振動がこっちまで伝わってきて、字を書いるとブレて困る。
鼻息が荒いのも気になる。スーハースーハーいちいち不快な気分になる。

そうそう、作業に集中しだすと右手で髭の剃り残しをさわるのもやめて欲しい。
髭をさわった流れでもみあげを弄りはじめて、最後はその手で鼻をほじり出す。
職場にいることを忘れているんじゃないだろうか。

足を組むのはイスに座って大体15分過ぎてからだ。
ほら、見ろ。
足を組んで僕のほうに足の裏を向けてきた。

……臭いのである。

これが夏になったら最悪だ。
汗っかきで体臭もすごいのに、クーラーの風がこちらに向かって吹くのだ。
本当、殺す気かと思う。
こっそり消臭剤をかけたり、置いたりしているが効果は感じられない。



「あ、そうだ。お前さ、手洗った後ちゃんと拭けよ。お前の後から部屋入ろうとしたらドアノブがさぁ濡れてんだよ。もっと他の人のことも考えろよ」

……てめぇに言われたくねぇ

先ほど大分遠慮して貫禄がある体格と言ったが、率直に言おう。

細見さんは、デブだ。

よくもまぁここまで図々しく太ったものだと言わんばかりに醜くぶくぶく脂肪を蓄えている。

何が細見だ。名前を変えろ。馬鹿。

なお、奴の今日の昼ご飯はコンビニで買ってきたカツ丼にインスタントラーメン、それとロールケーキだ。

その体型でまだ食う気か。

くちゃくちゃ音を立てながら咀嚼し、口を開く度舌を出すのやめろ、気持ち悪い。
汁も飛び散らしながらガツガツ汚く食い散らかしていたかと思ったら、急に口をあけたまま固まった。

そして、大きなゲップを一つ。

そのあと片尻を上げてオナラを一発。

…………
頼むから死んでくれ……。


「なあ、昨日テレビにグラドルのミサちゃん出てたろ、見たか? むっちむちだな」

口に物が入ったまま、むははといやらしく笑う。

改めて顔を見ると、全体的に色黒の肌はインスタント食品ばかり食べているせいか肌荒れし、脂で汚くてかっている。
毛穴も開いて黒ずみが出来、顎ラインから首筋にかけて赤い吹き出物がぼつぼつある。
濁った目をデレデレに垂らして、分厚い唇からツバを飛ばしながら話す姿は、もうそれ自体が犯罪と言っても過言ではない気がする。

わいせつ物としてモザイクでもかけてやりたい。


適当に相槌をうっていると、突然「あー!」と大声を出してどっかに消えた。

何かまだ食べるものでも買いに行ったのか。
まぁ隣にいないだけ助かるというものだ。
一生帰ってくるな。


「細見さんいないんですかー? 寂しいですねぇ」

後輩の女の子たちがお昼終わりに化粧ポーチを提げながらそう話しかけてきた。

「え? 寂しい?」

「だってーーいつも細見さんと仲良しさんじゃないですかぁ。頼りにしてるとことか、さり気なくサポートしてるとことか、夫婦みたいだって皆で話してるんですよ」

まじかよ。

空いた口が塞がらなかった。

そんな風に見られていたなんて……
心外にも程がある。

あいつと夫婦とか…

ちょっと考えあまりのえげつなさにぶるっと身震いした。

ああ、我慢の限界だ! あいつの顔を思い出すだけで吐き気がする!
仕事効率も下がるし、ずっと悩んでいたが、もう、今日、今から、上司に席替えを申告しよう!

いきり立って立ち上がると、細見の野郎が帰って来た。

「はぁ、良かった間に合った。これやるわ」

はぁはぁ息を切らしながらB4サイズの紙袋を差し出した。

「なんですか…これ」

「お前、今日誕生日だろ。おめでとさん」

!!!

自分でも忘れてた誕生日をなんで細見さんが覚えているんだ…。

今走って用意しにいってくれてたのか……?

「あ、ありがとうございます……!」

にやっと笑ったその顔はどこか愛嬌のある馴染んだ顔だった。

もう少しこの人の隣でがんばってみよう……。
自分も神経質になりすぎていた気がする。悪い癖だ……直さないと。



その日。
自宅に帰ってから貰った紙袋を開けてみた。

すると中からグラビアアイドルミサちゃんの写真集が出てきた。

おまけにこれ…一度開封して読んだ後のやつじゃねえかよ……袋とじが開いてるんだが


やっぱり細見さんの隣は嫌だ!!


(了)


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~ Comment ~

わはははは

うわぁ、いやな男ぉ。
いやだいやだいやだぁ。

と思いながら読んでいたのですが、このアップダウンの激しさは、いわゆるジェットコースター小説みたいな?
そうですか、そう落ちましたか。

主人公が男性だからこれですむんでしょうけど、女性だったらもっともーっと早く、席替えを申し出てるでしょうね。

で、とかなんとか言って、主人公は細見さんと腐れ縁でずっと続いていったりして。
気がつけば同棲していたりして……。

同棲なんかしたら、この女性社員が大喜びしそうですね。
私も喜ぶかな……意地悪でごめんなさい、主人公さん。

あかね様

わ!早速コメントありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ

嫌な男ですよね(-_-;)
ここまで酷くはないんですが、似た感じの人の隣になったことがあるんで、それを元に書いてみました。

最近暗いお話ばかり書いてたんで、ちょっと気分転換に軽めに面白くしてみました。楽しんでいただけたなら本望です(*^_^*)

私もあかねさんと同じ意見で、きっと主人公と細見さんはなんだかんだでつるむことになると思います(笑)
主人公にしたら災難ですが(笑)
きっと女性社員の中では最高の話題になってそうです(笑)
末永く仲良しでいて欲しいと思います♪(意地悪

これは

たるさんの実体験? かなりリアルな描写があちこちに……
掌編として、としてももちろんですが「あるある」的に楽しんじゃいました。
本当に「ちょっとイヤ」なんですよね、いやなんですけれど、何だか根本のところで嫌悪しているわけではないのでしょうね(人間的にどうとか)。だからどこかで許容している。でも生理的にはちょっと……微妙なジレンマが何だか分かるわぁ。
最も人と人との関係って、多かれ少なかれこんなところがあるんだろうなぁ~。「ちょっと嫌なんだけれど、何だか一緒にいる」っての。で、これがまたそのうち慣れて来ちゃうんですよね。いなくなったら逆に寂しくなって(^^)
楽しく読ませていただきました~!

大海彩洋様

まるまる細見さんみたいな人ってわけではないのですが、似た感じの人の隣になったことがあるのでそれを元に書いてみました(^^)
いますよねーこういう人(>_<)やめてとも言いづらいし、困ります。

私は空いてる席とか、会議室へ移動してそっちで作業してましたが、主人公は移動出来ない状況?なのかな?(←作者)大変そうです(笑)

このジレンマ分かってもらえて嬉しいですヽ(=´▽`=)ノ
人間関係で100%ぴったりの人ってほんと稀ですよね。差異がいいって相手もいますし。

そうそう、細見さんタイプはいるとストレスなんですけど、いなくなると寂しくなっちゃうんですよね。存在感があるだけに(笑)

楽しんでもらえて良かったです♪
大海さんのお話、続きが気になるのでまた近日中にお邪魔しますね!
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